子どもの能力は生まれつき?育て方?どちらの影響が大きいの?
親として子どもには自分の短所や苦手なことは似てほしくないと願うもの。そもそも子どもの能力は遺伝で決まるのでしょうか、それとも育て方によるのでしょうか。ある研究では行動や能力には少なからず遺伝が影響するとわかっているそうです。ここでは遺伝の影響について紹介します。
- 遺伝はどこまで影響するの?
- 遺伝と環境が相互に作用するほど能力が伸びる
- 大切なのは子どもの興味をどう生かすか
遺伝はどこまで影響するの?
行動遺伝学では顔つきや体つき以外に、学力や運動能力、芸術的才能、心理や行動にも遺伝的影響があるといわれています。
「親の学力は子どもに遺伝する」などといわれることがありますが、IQ(知能指数)は50~60%、個性や人柄などのパーソナリティは30~50%の遺伝の影響があるとのこと。人の能力は、生まれつき決まっているわけではなく、持って生まれた素質はあくまでも要素のひとつ。その後の環境によって大きく変化するものなのです。
では半分は両親に似るのかというと、そんな単純な話でもないようです。
人の遺伝子は2万個以上もあり、子どもはパパママからランダムに半分ずつを引き継ぎます。2万個×2万個の組み合わせなので、その組み合わせパターンは4億通り以上ということになります。そう考えると、同じ夫婦から生まれた兄弟でも、顔つきや性格、好きなこと、苦手なことが違うのは納得ですね。
遺伝と環境が相互に作用するほど能力が伸びる
たとえばIQの場合、遺伝の影響を受ける割合(50%程度)以外は、環境によって形作られるということになります。とはいえ、遺伝と環境は単純に足し引きの関係ではなく、かなり複雑に絡み合っているということも研究によってわかってきています。
たとえば音楽についての情報が書き込まれている遺伝子を持っている子どもは音楽を聴いたり、演奏したりすることが好きな傾向があり、周囲に音楽的なものがあれば好んでやるようになります。音楽により深く接触することでその子どもの能力を伸ばすことができるのです。
このように遺伝と環境が相互に作用し合うことで、その子どもの「個性」が形作られていきます。学力についても同様で、遺伝だけではなく家庭環境による学習行動が大きくかかわってきます。家庭環境の影響は子どもの年齢が低いほど受けやすく、能力を伸ばすチャンスも大きくなります。
大切なのは子どもの興味をどう生かすか
2~3歳ぐらいの幼児期は「イヤイヤ期」といわれていますが、やりたくないことがわかりはじめて自分の好きなものが何かを探している「自分探しの時期」ともいえます。
親としては「子どもにいろいろな経験をさせてあげたい」という思いから、あちこちに連れていったり、習い事をさせたりしがちですが、もっと身近なことでも「自分探し」はできます。子どもにとっては身の回りのあらゆるものが遊び道具になったり、実験の対象になったりします。まずは子どもの行動をよく観察することで、子どもが強く興味を持っているものや好きなことがわかってくるはずです。
子どもは、パパやママの遺伝子の一部を持ってはいますが、親とは異なる遺伝的素質も持ち合わせています。持って生まれた遺伝について心配するよりも、残りの環境をどう作っていくかに目を向けてみましょう。乳幼児期にもっとも重要なのは、「目的のない遊び」を自由に、自発的に、たくさんできること。それこそが子どもが好きなことを見つける近道なのです。親の気持ちを押し付けずにゆったりした気持ちで見守ることも大切です。