「くるみ」などのナッツ類はアレルギーや窒息・誤嚥事故に注意!
近年アレルギー症例が増えている「くるみ」などのナッツ類。子どもに与えるときは窒息や誤嚥(ごえん)事故にも十分な注意が必要です。
- くるみアレルギーは10年前の10倍以上に増加
- 表示義務のあるアレルギー食品に「くるみ」が追加へ
- 消費者庁はナッツや豆の窒息・誤嚥事故にも注意喚起
くるみアレルギーは10年前の10倍以上に増加
2022年6月、消費者庁から「食物アレルギーを引き起こすおそれがある特定原材料」のひとつに「くるみ」を追加する方針が発表されました。
近年は乳幼児から大人まで、特定の食物が原因でアレルギー症状を起こす人が増えてきています。
食べてから2時間以内にかゆみやじんましん、目、鼻、唇、のどなどの腫れやかゆみ、腹痛や嘔吐、下痢、喘鳴(ぜいぜい、ヒューヒュー)といった症状が現れるタイプを「即時型食物アレルギー」といい、全身や複数の臓器に症状が現れる「アナフィラキシー」、さらに意識障害や血圧低下など重篤な症状をともなう「アナフィラキシーショック」を起こす人も年々増加しています。
2001年からおおむね3年ごとに実施されている「即時型食物アレルギーによる健康被害の全国調査」によれば、くるみは「即時型症例数」も「ショック症例数」も大幅に増加。
10年前の2012年度は即時型症例数が40件で全体の9位だったのが、2021年度の最新データでは症例数が463件となり、順位も鶏卵、牛乳、小麦に次ぐ4位になっています。
重篤な症状を引き起こしたショック症例も、2012年度は症例数4件で10位だったのが、2021年度は症例数58件、順位こちらも同じく鶏卵、牛乳、小麦に次ぐ4位になっています。
表示義務のあるアレルギー食品に「くるみ」が追加へ
こうした食品による健康被害を防止するため、国の食品表示法では、容器包装された加工食品の原材料や添加物のなかにアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を含む食品がある場合、それを明記するよう定められています。
現在(2022年10月末時点)、食品表示法で表示が義務化、もしくは推奨されている品目は以下のとおりです。
◇表示義務のある「特定原材料」7品目
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
※発症数や重篤度から表示する必要性が高いもの
◇表示を推奨している「特定原材料に準ずるもの」21品目
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
※症例数や重篤な症状を呈する者の数が、継続して相当数みられるが特定原材料に比べると少ないもの
表示品目については症例数や症状の重篤度などを考慮して随時見直しが行われていますが、2021年度の調査結果を受け、表示義務のある「特定原材料」に8品目目としてくるみを加える方針が決定。今年度中に制度を見直す手続きを始めることが発表されました。
消費者庁はナッツや豆の窒息・誤嚥事故にも注意喚起
従来、食物アレルギーでは鶏卵、牛乳、小麦が3大アレルゲンとして知られていましたが、先述のように2021年度の最新データではくるみがそれに次ぐ4位に浮上。くるみにカシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、ピスタチオ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、カカオ、クリ、松の実などの木の実も加えると、「木の実類」の合計が小麦を抜いてアレルギー原因食物の3位になっています。
そのため、初めて子どもに木の実類を食べさせるときはアレルギー症状への十分な注意が必要です。
さらにこうした木の実類や落花生(ピーナッツ)、節分の豆(煎り大豆)などには、窒息や誤嚥(ごえん)のリスクもあります。
まだ歯が生えそろわず、かみ砕く力も飲み込む力も未発達で気道も狭い子どもが木の実類や硬い豆類を食べると、のどに詰まらせて窒息したり、小さなかけらが気管や気管支に入り込む誤嚥によって気管支炎や肺炎を起こしたりする可能性があるのです。
消費者庁公開資料には「大人に近い咀嚼(そしゃく|食べ物を歯でかみ砕くこと)ができるようになり、飲み込んだり吐き出したりする力が十分に発達するのは3歳頃ですが、その2つを協調させることができるようになるのは6歳頃と言われています」とあり、「硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで」と注意を呼びかけています。
食物アレルギーの可能性と窒息や誤嚥のリスクを考え合わせ、5歳以下の子どもに木の実類や豆類を与えるときは粒の入っていないなめらかなペースト状のものを選び、硬くてかみ砕く必要のある木の実類や豆類を食べさせるのは6歳以上になってからにしましょう。