2023年10月開始「年収の壁・支援強化パッケージ」とは？
2023年10月、厚生労働省から扶養内で働くパート労働者等に対する支援策「年収の壁・支援強化パッケージ」の具体的な取り扱いが公表されました。この支援策の内容を紹介します。
- 「年収の壁」とは？何が問題になっている？
- 「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容
- 「年収の壁・支援強化パッケージ」の支援を受けるには
「年収の壁」とは？何が問題になっている？
配偶者の扶養に入っているパート・アルバイトの方は、年収が一定額を超えると社会保険料の負担が発生します。この社会保険料の負担が発生する年収の基準を「年収の壁」といい、基準を超えてしまうと社会保険料の負担により手取り収入が減ってしまうため、基準を超えないよう就労調整を行う方がいます。
昨今、この「年収の壁」による働き控えが人手不足を招いている、という声が急速に高まってきました。そこで政府は、年収の壁を意識せず働けるようにし、人手不足を解消するための支援策を作りました。この支援策が「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
「年収の壁・支援強化パッケージ」の実施は2023年10月20日からで、すでに始まっています。
年収の壁には、住民税・所得税に関わる「100万円」「103万円」「150万円」「201万円」の壁と、社会保険の加入に関わる「106万円」「130万円」の壁の計6種類がありますが、「年収の壁・支援強化パッケージ」の対象となるのは、「106万円」と「130万円」です。
では、具体的な内容をみていきましょう。
「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容
■「106万円の壁」への支援内容
パート・アルバイトの方が厚生年金や健康保険に加入するにあたり、事業主が社会保険料分に相当する額の支給や賃上げなどの手取り収入を減らさない取組を行うと、事業主に対して労働者1人当たり最大50万円の助成金が支給されます。
この助成金の交付を受けるには、事業主が「キャリアアップ助成金（社会保険適用時処遇改善コース）」に申請します。手取り収入を増加させる取組を行ったあとに助成金が交付される仕組みです。
上記のほか、事業主が「社会保険適用促進手当」として事業主からパート・アルバイトの方に手当を支給すると、本人負担分の保険料を上限として保険料算定の対象にしないこととする支援もあります。この手当は社会保険料の算定対象外となるので、事業主、パート・アルバイトともに保険料の負担が減ることになります。
■「130万円の壁」への支援内容
パート・アルバイトの方が、繁忙期に労働時間を延長したことなどによって収入が一時的に上がっても、事業主が「一時的に収入が上がった」ことを証明すれば、引き続き配偶者の扶養にとどまることができます。ただし、連続2年間までとなります。
「年収の壁・支援強化パッケージ」の支援を受けるには
■「106万円の壁」の場合
パート・アルバイトの方が厚生年金保険・健康保険に加入する際に、手取り収入が減らないよう取組を行う事業主が、労働局やハローワークに取組計画の提出や支給申請をすることになります。パート・アルバイトの方は、勤務先に「年収の壁・支援強化パッケージ」への対応を検討しているか、確認してください。勤務先が対応する方針であれば、パート・アルバイトの方は支援を希望する旨を勤務先に申告しましょう。
■「130万円の壁」の場合
勤務先から一時的に収入が増加した旨の証明書を発行してもらいましょう。そして、配偶者の職場における被扶養者の収入の確認時に、発行してもらった証明書を提出してください。
証明書の様式は、厚生労働省Webサイトからダウンロードできるようになっています。
106万円、130万円どちらの支援策も、具体的な手続き等は事業主が行うことになるため、パート・アルバイトの方は、まず勤務先に「年収の壁・支援強化パッケージ」に対応する予定があるかどうかを確認することになりますが、すでに勤務先が「年収の壁・支援強化パッケージ」に対応する方針であれば、勤務先から勤務時間を増やしてほしいといった要望があるかもしれません。
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、2025年に予定されている次期年金制度改正まで2年間だけの時限措置となります。すでに年金制度の改正に向けて、社会保障審議会年金部会で議論が開始されています。「106万円の壁」「130万円の壁」で働く方は、今後の動向を注視しましょう。
「年収の壁・支援強化パッケージ」に関する最新情報は、厚生労働省、首相官邸ホームページなどでご確認ください。
