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災害時の授乳、どう備える? 知っておきたい “もしも” のときのポイント

災害が起こったとき、赤ちゃんがいるご家庭にとって最も心配なのが、赤ちゃんの栄養ではないでしょうか。 この記事では、災害時の授乳で起こりやすい困りごとや避難先で知っておきたい授乳のポイント、内閣府による授乳支援の仕組み「授乳アセスメントシート」 について紹介します。

  • 災害が起きる前にしておきたい備え
  • 避難先での授乳<ミルク・混合授乳の場合>
  • 避難先での授乳<母乳の場合>
  • 内閣府も授乳支援の体制を整備
  • 最後に

    災害が起きる前にしておきたい備え

    災害が起こると、ライフラインの途絶、物資不足、慣れない避難生活など、さまざまな不安が一気に押し寄せます。特に乳児を育てている家庭では、「ミルクや母乳をどうやって与えるか」「必要な物は手に入るのか」といった心配が大きくなりがちです。
    すべての避難所が粉ミルクや液体ミルク、お湯などを十分な量を備蓄しているとは限りません。災害時に慌てないためにも、日頃から家庭でしっかり備えておくことが大切です。
    災害に備えて用意しておきたい赤ちゃん向け防災グッズについては、以下の記事を参考にしてください。
    赤ちゃんの防災グッズ、しっかり準備しましょう(子育てタウン)

    避難先での授乳<ミルク・混合授乳の場合>

    ミルクや混合授乳の場合、災害時に特に問題となりやすいのが「お湯が沸かせるか」「哺乳瓶を洗えるか」という点です。
    粉ミルクは、粉ミルク中の細菌を死滅させるために70℃以上のお湯で調乳すること、また、哺乳瓶や乳首を洗浄・消毒することが重要となりますが、災害時にはこれらが難しい場合があります。

    ■お湯を沸かすことができない場合

    液体ミルクがある場合は、無理に粉ミルクを使わず、液体ミルクを使いましょう。液体ミルクは常温でそのまま飲ませることができ、災害時の強い味方です。
    液体ミルクがなく、どうしても沸騰したお湯を用意できないときは、やむを得ず水道水、硬度の低いミネラルウォーター(軟水)を使用することになります。給水車の水を使う場合は、できるだけ当日給水されたものを使ってください。
    なお、70℃に満たないお湯や水での調乳は、粉ミルク中の細菌を完全に不活性化できない可能性があることを理解したうえで、やむを得ない非常時の対応として行うということを理解しておきましょう。

    ■洗浄・消毒が難しい場合

    哺乳瓶や乳首の洗浄・消毒が難しい場合は、使い捨ての哺乳瓶・乳首・紙コップ、スプーン等を使います。
    紙コップやスプーンなどで飲ませる方法をカップフィーディングといい、生まれて間もない赤ちゃんにも哺乳瓶を使わずに飲ませることができます。
    カップフィーディングのやり方については、以下の記事で詳しく紹介しています。
    カップフィーディングを試してみませんか? 乳頭混乱対策と災害時の備え(子育てタウン)

    災害時は衛生環境が悪くなりやすいので、飲み残したミルクは必ず破棄しましょう。

    避難先での授乳<母乳の場合>

    母乳は水も道具もいらず、さらに免疫成分を含んでいるため、感染症予防の観点からも、可能な範囲で母乳を少しでも多く与えることが望ましいとされています。欲しがるときに欲しがるだけあげてください。また、十分なプライバシーが確保されているかはわからないため、授乳ケープや大きい布があると安心です。

    ■ストレスで母乳が止まる?

    災害時の強いストレスや恐怖によって、母乳を外に押し出すホルモン(オキシトシン)が減少し、一時的に母乳の出が悪くなったと感じることがあります。しかし、母乳を作るホルモン(プロラクチン)はストレスの影響を受けにくいので、繰り返し赤ちゃんに吸ってもらうことで、母乳の流れは再開し、元に戻ることが多いと考えられています。
    また、赤ちゃんの肌とママの肌が直接触れ合うスキンシップによって、オキシトシンの分泌が促されることもわかっています。できるだけリラックスできる姿勢で、頻繁に授乳してみてください。

    ■母乳が足りているか心配なときは排泄をチェック

    母乳の量が足りているか不安なときは、赤ちゃんのおしっこの回数を確認してみてください。普段と同じように出ていれば、足りていると考えてよいでしょう。目安としては、おしっこが1日6回以上出ていれば、水分がとれているサインです。6回未満の日が続くときは、粉ミルクや液体ミルクを足したり、医療者や相談窓口へ相談することを検討しましょう。

    内閣府も授乳支援の体制を整備

    災害時に授乳中のママが孤立しないよう、 内閣府男女共同参画局では「授乳アセスメントシート」を作成し、自治体向けガイドラインとして展開しています。
    このシートを使うことで、避難所スタッフが以下の点を把握しやすくなります。
    ●赤ちゃんの月齢や栄養状況(母乳・ミルク・混合など)
    ●ママの体調・授乳に関する悩み
    ●必要な支援(ミルクの提供、授乳室の確保、相談など)
    ●リスクのあるケースの早期把握

    国が授乳支援を後押ししているため、避難所において適切なサポートが受けられる仕組みが整いつつあります。
    また、「母と子の育児支援ネットワーク」では、災害時にLINEを通じて乳幼児の栄養・授乳に関する相談を受け付けています。不安や困りごとがあるときは、こうした窓口を活用してみてください。
    災害時の乳児栄養・授乳相談窓口(母と子の育児支援ネットワーク)

    最後に

    災害時の授乳には、不安や迷いがつきものです。事前に知識を持ち、できる備えをしておくことが、非常時の不安軽減につながります。
    そして、いざというときはひとりで抱え込まず、周囲の人や支援の仕組みを頼りながら、無理のない方法で赤ちゃんの栄養を守っていきましょう。

    <参考>
    災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~(内閣府男女共同参画局)
    災害時の乳幼児栄養の支援情報(母と子の育児支援ネットワーク)
    赤ちゃん防災プロジェクト(公益社団法人 日本栄養士会)