子の看病や通院のために休みをもらう|1年に5日取得できる「子の看護休暇」
子どものケガや病気、健診などでパパママの看病や付き添いが必要なときに取得できる「子の看護休暇」について、詳しく紹介します。
- <この記事のポイント>
- ◇「子の看護休暇」はパパママが子どもの健康をサポートするための制度です。
- ◇正社員、パート、契約社員、派遣など、ほぼすべての労働者が「子の看護休暇」を取得できます。
- ◇法令以上の優遇を定めている会社・団体もあります。就業規則を確認しましょう。
小学校入学前の子どもを養育する労働者は1年に5日「子の看護休暇」を取れます
「子の看護休暇」は、育児・介護休業法(※1)で定められた法定休暇(※2)のひとつです。子育てしながら働くパパママは、看病や通院などで子どもの世話が必要なとき、1年度につき5日(子どもが2人以上の場合10日)までは、年次有給休暇とは別に、「子の看護休暇」を取得することができます。
※1 正式名称:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
※2 法定休暇とは「法律に定めのある休暇」で、事業主がその休暇制度を導入しているかどうか、就業規則に記載があるかどうかなどに関係なく、状況が発生したときには必ず取得させる義務のある休暇です。
制度を利用できる日数|1年度につき未就学児1人5日、2人以上10日
「子の看護休暇」の取得可能日数や取得単位は、法令で以下のように定められています。
取得可能日数
「子の看護休暇」を取得できる日数は、小学校就学前の子ども(以下「未就学児」)1人につき、1年度あたり5日までです。未就学児が2人以上いる場合は、人数にかかわらず1年度あたり10日までとなっています。
「1年度」とは、特に定めがない限り「毎年4月1日〜翌年3月31日」を指しますが、事業所によっては「毎年1月1日〜12月31日」などとされているケースもあります。
取得単位
「子の看護休暇」は、1日単位、または時間単位で取得することができます。
取得単位の「1日」は、当該労働者の1日あたりの所定労働時間を指します。それより少ない場合は「時間単位の取得」となり、休暇を取得した時間数の合計が1日あたりの所定労働時間に達するごとに「1日」と換算します。
また法令で定められている「時間単位の取得」は、原則「始業時間から連続した時間」と「終業時間までの連続した時間」のみで、いわゆる「中抜け」を認めるかどうかは事業主の裁量に委ねられています。
なお、日によって所定労働時間数が異なる場合の「1日」は、年間で見たときの1日あたりの平均所定労働時間数とされます。
制度の特徴|予防接種や風邪の様子見などにも適用可能
「子の看護休暇」を取得する際の条件など、さらに詳しい内容を紹介します。
取得の対象となる理由
「子の看護休暇」は、子どもがケガや病気、体調不良などで看病や通院、付き添いが必要なときに取れる休暇で、予防接種や健康診査など、疾病の予防や早期発見を図るために必要なケアも含まれます。
ケガの程度や病気の種類などで取得が制限されることはないので、たとえば風邪による軽い発熱などでも取得は可能です。基本的に「子どもの健康に関わるサポート」が取得の条件になると考えるとよいでしょう。
時季変更権の有無
たとえば「年次有給休暇」は原則として労働者が申請すれば取れる休暇ですが、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、使用者側(上司など)には他の時季に有給休暇を与える「時季変更権」が認められています(※)。
「子の看護休暇」に関しては使用者側に「時季変更権」はなく、業務の繁忙などを理由に取得を拒むことはできないとされています。
※労働基準法第39条第5項
有給?無給?
「子の看護休暇」を取得した際の給与について、育児・介護休業法には定めがなく、有給の休暇とするか無給とするかは事業主の裁量に委ねられています。
ただし「子の看護休暇」は法定休暇であり、無給だとしても「欠勤」とは異なるため、賞与や昇給、人事考課などで不利益な取り扱いをしてはならないと定められています。
制度の対象者|正社員、パート、契約社員、派遣などほぼすべての労働者
「子の看護休暇」を取得できるのは、小学校就学前の子どもを養育している労働者です。
正社員・正職員・公務員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣労働者など、ほぼすべての雇用形態で働く労働者が、この休暇を請求することができます。
家族やパートナーに専業主婦(専業主夫)がいても、それを理由に「子の看護休暇」の申し出を拒むことはできないとされています。
ただし、法に基づいた労使協定の締結がある場合、以下のような人は「子の看護休暇」の適用対象から除外されることがあります。
◇雇用期間が6カ月未満
◇1週間の所定労働日数が2日以下
また、1日未満の単位で子の看護休暇を取得するのが難しい以下のような業務は、法に基づいた労使協定の締結により、「時間単位の子の看護休暇」のみ適用除外(※)とされることがあります。
◇航空会社(国際線)の乗務員
◇長時間の移動が必要な遠隔地で行う業務
◇交代制勤務による業務
◇流れ作業方式による業務 など
※「1日単位の子の看護休暇」は適用対象となります。
制度を利用するための手続き|緊急の場合は当日の電話でも可
「子の看護休暇」を申し出る場合、原則として以下のような内容を明らかにする必要があります。
◇労働者の氏名
◇看護が必要な子の氏名及び生年月日
◇子の看護休暇を取得する年月日
※1日未満の単位で取得する場合には、看護休暇の開始及び終了の年月日時
◇子が負傷している、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うなどの旨
あらかじめ「子の看護休暇」の申請書が用意されている場合はそれを利用します。
ただし、子どもの突発的なケガや発熱などに対応できるよう、当日の電話など口頭での申し出についても取得を認め、申請書などの提出は事後でも可能とすることが求められています。
また事業主は、看護が必要だったことを証明する書類の提出を求めることも可能ですが、その場合も労働者に過重な負担を求めない配慮が必要とされています。
おしえて!FAQ
「子の看護休暇」について、多く寄せられている疑問点と回答について紹介します。
Q1 夫婦で共働きの場合、どちらか一方だけが取得可能なのでしょうか?
A いいえ。「子の看護休暇」は労働者一人ひとり、各人に与えられる権利です。たとえば夫婦が同じ会社に勤務しているとしても合算することはできません。「子の看護休暇」の取得可能日数は未就学児1人につき年5日(2人以上は10日)なので、夫婦がそれぞれ取得すれば合わせて年に10日(2人以上は20日)の看護休暇を取得できることになります。もちろん夫婦同時に取得することも可能です。
Q2 コアタイムなしのフレックス勤務だと、時間単位の休暇は取れないのでしょうか?
A いいえ。コアタイムのないフレックスタイム制度で働く労働者も、申し出れば時間単位で「子の看護休暇」を取得することができます。
フレックスタイム制度とは、一定の期間内においてあらかじめ定められた総労働時間があり、その範囲内で労働者自身が日々の始業や終業、労働時間を設定する勤務形態で、「労務提供義務」があります。
これに対し「子の看護休暇」を取得している時間は「労務提供義務」が消滅するため、フレックスタイム制度など柔軟な勤務体系を導入している事業所であっても、時間単位の「子の看護休暇」を認めるよう求められています。
Q3 「子の看護休暇」と「介護休暇」との違いを教えてください。
A 「介護休暇」とは、「子の看護休暇」と同じ育児・介護休業法に定められた法定休暇で、「要介護状態」にある家族の介護や世話が必要なとき、1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合10日)までは、年次有給休暇とは別に、「介護休暇」を取得することができます。
なお、育児・介護休業法における「要介護状態」とは2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。
「子の看護休暇」と「介護休暇」の大きな違いは、対象となる家族の範囲と、世話の必要な人が「要介護状態」にあるかどうかです。
「介護休暇」の対象となる家族の範囲は以下のとおりです。
◇配偶者(事実婚を含む)
◇子ども(年齢不問)
◇自身の父母、配偶者の父母
◇祖父母
◇兄弟姉妹
◇孫
「要介護状態」にあるかどうかの基準については以下のサイトを参照してください。
適用される法律|育児・介護休業法
今回紹介した「子の看護休暇」について定められたおもな法律、および指針は以下のとおりです。
- ◇育児・介護休業法
正式名称:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
(子の看護休暇)第16条の2、3、4 - ◇「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」
- ◇「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」
「子の看護休暇」についての関連情報
この制度についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の情報も確認してみてください。
厚生労働省サイト|育児・介護休業法について
※2021年に改正され、2022年4月1日から順次施行されている改正育児・介護休業法のあらまし、改正のポイントをまとめたパンフレットなどが見られます。
厚生労働省委託 妊娠出産・母性健康管理サポート
※働きながら妊娠・出産・育児に臨む女性にとって大切な法律や制度、措置などがまとめられています。
※本コラムは、令和5年4月1日時点の法律に基づいています。お手続きなどの詳細につきましては、会社のご担当者様にご確認ください。
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