【制度解説】 定期予防接種と任意予防接種
生後2か月からスタートする予防接種。小さい赤ちゃんに注射をするなんて、考えただけでもかわいそう…。なんて思ってしまいますが、そもそも予防接種とは何のために受けるのでしょう?
定期予防接種と任意予防接種の違いって?
予防接種には、法令で定められた定期接種と、本人が希望して行う任意の予防接種とがあります。定期予防接種は、定められたワクチンを定められた方法で接種する場合は、公費助成により無料で受けられます。
2020年7月現在では、B型肝炎、Hib(ヒブ)、小児用肺炎球菌、4種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ )、BCG(結核)、MR(麻しん・風しん混合)、水痘(みずぼうそう)、日本脳炎などが含まれます。
任意予防接種は、全額自己負担となりますが、自治体によっては助成を行っている場合があります。また、予防接種は健康保険が適用されない自由診療(保険外診療)なので、接種費用は病院によって異なります。2020年7月現在では、おたふくかぜ、インフルエンザなどが含まれます。
予防接種が必要なワケは?
予防接種は、免疫のない赤ちゃんや小さな子どもを、感染症から守るために接種するのものです。感染症とは、病原体が人の体内に侵入して引き起こされる病気のことを言います。いったん感染すると、多くの場合は体がその病原体を覚えて、次に入ってきた時に早く撃退する免疫システムを獲得します。人の体ってすごいですね。
でも、子どもの場合は安心はできません。なぜなら、たくさんの免疫を生まれてからの短期間で身につけることは不可能ですし、しかも、医療技術が進んだ現在でも確実な治療法のない感染症がたくさんあるからです。もし赤ちゃんがそんな病気に感染してしまったら命にかかわるケースがあることを、パパやママはしっかり認識しておく必要があります。
赤ちゃんも、赤ちゃんに接する家族も、生活の中でいろいろな場所へ出かけて行く以上、目に見えない病原体といつ接触しても不思議ではありません。「うちの子は絶対にかからない」とは、決して言い切れないのです。
予防接種(ワクチンの接種)が必要と言われるのは、そうした怖い感染症のリスクを抑える唯一の手段だから。
ワクチンを受けておくと実際にその病原体に感染しても、発症や重症化を防ぐことができるのです。
残念ながら、ワクチンで防げる病気は、たくさんある感染症のごく一部にすぎません。だからこそ、今あるワクチンを役立てないのはとてももったいないこと。
大切な赤ちゃんを守るためにも、予防接種を積極的に受けましょう。
予防接種に副反応(副作用)はないの?
小さな赤ちゃんに注射するだけでも心配なのに、ワクチンを接種した部分が赤く腫れたり、熱が出たりすることもある・・・そう聞くと、接種してもいいのかどうか迷うママもいるかもしれませんね。
でもそれは、接種したところの腫れ以外は、必ずしもワクチンが原因でないことも多いのです。たとえば、たまたま風邪をひいていて接種後に熱が出た・・・というようなケースです。
また、ワクチンの副反応(副作用)であった場合でも、その症状のほとんどは数日以内に自然に治まる軽いもの。それよりも、ワクチンを接種せずに重い病にかかるリスクのほうが、はるかに怖いことだと言えます。WHO(世界保健機関)をはじめ、世界中で予防接種が推奨されているのも、接種後の調査をしっかり行い、ワクチンの安全性が確認されているためです。
ただし、体質は一人ひとり異なるため、重い副反応が起こる可能性がゼロではないのも事実。たとえば大変まれですが、生まれつき免疫力が非常に弱い赤ちゃんが、そう診断される前に生ワクチンを受けてしまうと、重症化の危険性が高くなります。
また、アレルギー体質が強い赤ちゃんも注意が必要です。安心して予防接種を受けるためにも、かかりつけ医の診察を受け、よく相談してから接種するようにしましょう。
任意接種は受けなくてもだいじょうぶ?
ワクチン接種には、公費負担(無料)で受けられる「定期接種」と、自己負担(有料)の「任意接種」があります。
定期接種は国や自治体が強く推奨しているのに対し、任意接種は保護者の判断に任されているということもあり、「費用もけっこうかかるし、任意接種は受けるのをやめようかな・・・」と考えるママもいるかもしれませんが、ちょっと待って!
お任せといっても、任意接種の感染症は、“ワクチン接種を受ける必要性が低い病気”というわけでは決してありません。多くの国では定期接種化されて無料で受けられるワクチンであっても、日本では定期接種でない場合、情報量が少ないために軽い病気のように思われたり、有料だからという理由でワクチンを受ける人が少ないのが現実です。
日本では、2020年10月から定期接種になるロタウイルスワクチンは、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンとともに、WHO(世界保健機関)がどんなに貧しい国でも国の定期接種に入れて、国民を守るように指示しているワクチンです。
また、同じく日本では定期接種ではないおたふくかぜも、みずぼうそうとともに、先進国において無料化することが望ましいと勧告しているワクチンです。
ロタウイルスとおたふくかぜは集団生活の中で流行しやすく、感染するリスクが高く、重症になる人も意外に多い病気です。
もしワクチンを受けないまま感染症にかかって重症化してしまったら、赤ちゃんがつらいのはもちろん、パパやママは仕事を休んでの看病が必要になりますし、治療費の負担も発生します。「あの時、ワクチンさえ接種しておけば・・・」と後悔することほど、残念なことはありませんね。
任意接種の費用はどのくらい?
任意接種のワクチン接種費用は、健康保険が適用されない自由診療となるため、医療機関によって異なりますが、ワクチン代だけでも平均的に1回3000円から5000円程度、同時接種で4本接種すると、2万円程度かかるものもあります。ただ、市区町村が独自に公費助成している場合もありますので、お住まいの自治体の情報を確認して、賢く利用しましょう。